「栩野君、君にすまないが、例の資料を引き上げてくれ!もし、ぜひにと言うなら君自身がクルマを売ってからにしてくれ。」と社長がいきなり切り出したのです!最初は耳を疑いました。「まさか?」という感じであります。もちろん、察しはつくのですが、何故、こんな低次元な理由に社長が「裏切る」のかと思いました。でも、今、グダグダ話をしてもラチがあかないのは明白ですから、この場を降りるしかないのです。反論の機会もない時間帯・・残念ですが、「ハイ」と答えて会議室に戻り、資料を回収しました。
一般に、世の中に「抵抗勢力」という言葉がありますが、これを実感しました。会議中は、まったく集中などできませんでした。自分を陥れた連中の顔がこちらを見てあざ笑っているように見えました。「悔しさ」というものをどのように表現すれば、いいのか分からない程、過去にない悔しさでした。約2時間の会議でしたが、何を議題にしていたのかも「おぼろ」な状態でいました。ただ「くやしい!」という一言だけが心を占めていました。
本来は、人事の等級制度で言えば、次長職の5号なので来年は部長という職位にいました。今まで、いろんな意味で会社に貢献してきた自負もありました。また、病弱な私に「コンピュータ」という武器を与えてくれた社長の厚意に恩義もありました。いろんな思いがありますが、結局、抵抗勢力の軍門に下って「一」から営業という職を歩む気になる訳がありません。4月からの毎日は、今までの仕事をドキュメント化することで「時間」を流していました。結構、いろんな仕事でルール化していましたから、夏までは、時間を無駄にすることはありませんでした。
しかし、徐々にドキュメント化も残り少なくなってくると、何も生産しない時間・・ただ時計の秒針が回るのを眺めることが多くなりました。徐々に、マイナスの要素が高まって体力に変化が出てきました。よく「窓際族」という言葉がありますが、仕事を奪われて空白な時間を流している人がよく健康でいられるなと思います。きっと、私にはない、夜、酒を飲んで「憂さ晴らし」という仲間を数多く持っているんでしょう。でも、私には、それはなかったのです。徐々に、体調がおかしくなりました。
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