和田君の場合、今までに経験も実績もある方ですが、極端に悪化した環境下の営業所に赴任したことにより「無能」化・・「ピーターの法則」と言いますが、条件が変わることで今まで「有能」だった人でも「無能」に陥るという現象・・した訳です。その主原因は、自拠点の立地が他社のテリトリーに接した辺境的なところであり、そこでは、他社が以前からカバーしていて、殆どが他社が販売しているという現実にありました。
従って、テリトリーをローラーして、自社取り扱い車種を見つけても他社が販売している、また、他社の営業所も自拠点と距離的な差がないので、「車検」などの案内しても、なかなか、効果が出ないという事が続いた訳です。また、商談になっても同じ車種で他社とラップするので、販売条件だけが決めてという事になっていました。ともかく、テリトリーの周辺部の問題に直面しました。テリトリーの境界に接近して他社が営業所を出すとその周辺は「自社テリトリー」ではなくなっているという事実です。
私は、こんな状態から脱出する方策を検討しましたが、ともかく、自分たちの「正当性」を訴求する事がベースだという結論に達しました。その視点からテリトリーを見てみると、道路の関係で、自拠点の方が有利な地域があるのです。その地域を選び、そこでローラーする方式を考えました。先に第18話で「VICSデータ」に触れましたが、このデータからこのエリアの「車検」期のクルマを選びだし、そのお客様に「車検ハガキ」を送ることにしました。しかし、自社のお客様ではないので、電話などの情報がコンピュータにないので、電話フォローする為に、事前に電話帳などで調べて「自社化」する方式を行いました。
和田君は、この「自社化」に興味を持ってくれました。「VICSデータ」から対象データをリストアップすると丹念に電話帳を調べてくれました。お客様の名前もカタカナから漢字になりました。この準自社データを使って、自社のお客様と同じ内容の「車検ハガキ」を発信することになりました。「予告」も入れているので、お客様から電話が来るケースもあり、ほぼ同じ結果が出ました。この「自社化」したことにより、「車検ハガキ」を受けたお客様は、自分はこの会社から買ったのだと錯覚するようでした・・他社も「売りっ放し」状態で、営業マンの名前すら覚束ない状態・・という事で効果が出始めました。
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