こんな具合で我々は「C80システム」の評価を下していましたので、トヨタの方も色んなプレッシャーをかけて来ました。ある日、名古屋のC80推進室に呼び出されて、担当部長に直談判されることがありました。この方は、立派な方なのでしょうが、ちょっと面白い角度で迫ってきました。
それは、福井社長がアマチュア・ゴルファーの頂点にいる事をどれ程理解して言い出したのか分かりませんが、その部長は「自分はシングルだが、道具はアベレージのものを使っている。C80もシングル用ではないかも知れないが、アベレージだ。君たちは、システムでは、シングルの部類だが、道具はアベレージでも充分だ。そう、福井社長に言っとけ!」と言い出したのです。何と興味深い比喩だと思いました。
私は、大学時代にゴルフ同好会に属していて、メンバーシップ・ゴルフ場の会員でしたので、「私も、もう少しでシングルだ。シングルにも片手と両手では質が違う。福井社長のように極めると1打1打に変化をかけてプレーするものだ。インテンショルなボールを打ちわけるには、それなりの道具が必要だ!」と切り返したのです。向こうの担当課長が後で「誰が担当員になるか分からない。福井社長が困った時に、こんな事が災いなるのでは詰まらないじゃないか」と諭してくれましたが、これも、納得の行かないものでした。
ともかく、我々の会社や先行の会社は、次のモデル「C90システム」の末期になって、トヨタが政策的に「サービス用データを提供しない」という事態になるまで導入を遅らせたのは事実であります。
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