このように政治的な決着で「マイエリア」の「無料点検」作戦は中止になりましたが、VICSデータをディスク上で保有管理するというメリットが別な面で現れました。それは、従来、街角で代替期のクルマを発見しても「所有者」が誰かを探しだすには、陸運事務所で「プレート番号」照会をかける必要がありました。金も手間もかかるものでした。
ところが、耳の早い営業マンが同じことができると知って、電話で問い合わせてくるようになったのです。昭和55年の話なので当時は携帯電話などありませんでしたが、公衆電話でリアルタイムに照会するという事になりました。ここでも「コア・インデックス」処理が活躍したのは、言うまでもありません。
「市場」が見えるようになると本当にマーケティングが変るものだと実感します。新車販売の作戦にもトヨタ系他社のクルマ、それも「車検期」のものをリストアップしてローラー作戦でアタックすることができるようになりました。この昭和55年は、景気が良かったので、このシステムの定量的な評価はできずにいましたが、営業にとっては有力な「武器」であったには相違ありません。
「情報を制するものは市場を制する」とIBMはよく宣伝しましたが、VICSで市場が見えるようになると本当に営業活動が「精神論」から「科学的なマーケティング」へレベルアップする訳です。福井社長の「クルマが売れるコンピュータ」という注文をひとまずクリアしたことになったと思います。
|