それは1枚のブレチンで始まった
栩野正喜


第27話 「A社のパートナーネット」B・・「日本橋に行かなくても安い!」

◆コピー用紙の宅配
事務機・文具店の最大の「悩み」はコピー用紙なのです。理由は、重くてかさばるからのですが、目玉商品化してしまって「儲け」にならない状況も大きなものでした。ここに、「スキマ」があるのです。プラスの「アスクル」に代表される文具系の通販システムの戦略商品が「コピー用紙」であるように、A社の「パートナーネット」も同じところに行き着くのです。後発の「パートナーネット」が支持された理由は、他の通販システムと違って事務機・文具店の名前で苦手な「コピー用紙」の商売ができる点にありました。
ともかく、コピー用紙が決め手となって、大量消耗品の商材が順々に「定番」化しました。例えば、トイレット・ペーパーもありますが、リサイクル・トナーは収益型消耗品として大ヒットしました。また、蛍光灯も提案型の消耗品として貢献しました。このように、核となる定番商品ができた事により、「パートナーネット」に参加するお店が増えて行ったのです。やはり、マーケティングの基本は、圧倒的に強い消耗品をコア・コンピタンスに据えることです。

◆デジカメに挑戦!
平成10年に入って、A社長はデジタル・カメラを拡販する戦略を打ち出しました。家電製品は、マージン率が低く収益性に乏しいものですが、敢えて、このデジカメにチャレンジしたのです。それも、ソニー・オリンパス・フジという品揃えで、1面デジカメという企画ができたのです。キャッチ・コピーは大阪地区なので「日本橋に行かなくても安い!」というものでした。このキャッチを貫く為に、3ヶ月で型が変わるという新陳代謝の激しい商品ですが、発表前に100台単位で先行発注する戦法を取りました。どれだけ売れるか分からない商品を先行発注するのですから、売りさばく自信がキーポイントになりました。
デジカメの成功事例で代表的なものは、パソコンとセットで販売する方式です。これは、小規模なお客様にヒットしました。会社の伝票で個人需要の商品を買う方式は古くからあるのです。パソコンとセットする方式は、量販店やTV通販などでもメインの売り方になっています。デジカメは、単品ではなかなか売れませんが、会社の経費化で拡販できたのです。それでも、大量に先行発注していますので、売り切る努力がポイントになります。

★教訓:「リピートする消耗品」はマーケティングのコアである

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