すべては「クルマが売れるコンピュータ!」で始まった!
栩野正喜


第5話 「登録データ」

私は、社長から「コンピュータでクルマが売れるようにして欲しい」と直に命じられているので、とりあえず、サービス部の「点検」や「車検」の案内状を発行することにしました。昭和51年の夏に、トヨタ自販のシステム部に「VICSデータ」が欲しいと頼みに名古屋まで行ったのです。Uさんは、私よりも5歳くらい上の方ですが、とても親切な方で親身になって「願い」を聞いてくれました。VICSというのは自動車の登録情報データを指すのですが、当時は、販売統計課が主管していましたので、M課長のところ案内してくれたのです。
このM課長は、「君の言うことは理解したが、どうも安易だ。大体、磁気テープもないシステムにフロッピー変換して渡すことなど考えられない!まず、自社の注文書があるのだから、それをインプットしたまえ!」という風に軽くいなされました。内心「くそっ!」と思いましたが、次のリベンジを楽しみに大阪に帰ったのを思い出します。
今、思えば、確かにM課長の言う通りで、「竹やりでB29を突き落とす」という範疇のコッケイさがある話ですが、小さいコンピュータでもできない訳がないというのが当時の信条でした。大阪には、保有台数で当時200万台もありました。それを1件100バイトで設計したとしても、200MBという計算になり、フロッピーは当時は300KB程度でしたから、約700枚で管理しようという今から思えばバカげた構想だったのです。思い込みというのは凄いエネルギーがあるのですね。Uさんの心を動かせたのですから・・

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