<月刊AMI>2019年9月号 Vol.217 ■△▽●○□


1..「戦略的変革」(Strategic Transformation)

 右掲は、私が中小企業家同友会の所属支部で「2025年事業承継」のテーマで報告した時の資料の一部です。
前号で理念について書きましたが、その理念に向かって組織を動かす為に「戦略」が重要になるのです。
しかし、その戦略とは何かを定義するのは意外に難しいものです。
会議を「戦略会議」と名付けても名称ばかりではPDCAサイクルの一環でしかないのが現実です。
これでは、何も新しい発想が生まれないのです。

 右掲は、日高義樹(元NHK、TV大阪の『日高義樹のワシントン・レポート』番組担当)さんが番組の中で「米軍が新兵器の登場で戦略的に部隊を再配置することを「Strategic Transformation」と呼んでいると教えてくださったのです。
直訳すると「戦略的変革」となると思いますが、要は「何をもって、どのように変わっていくか、その為にどうするか」という3つのポイントがあるという事です。
まず、「何をもって」ですが、これが一番重要です。
私の場合、24年前に「経営コンサルタント」になる戦略を立て、「Faxマーケティング」という企業なら100%普及の手段でコンサルティングを行うとして、その実践の為に「Fax一斉同報」と「Fax原稿の制作」という武器と能力をもつ事にしたのです。
そして、これをビジネス・モデルとして「Faxちらし・3段活用マーケティング」と商品化したのです。
皆さんの会社でも実践して頂きました。

 この事は、多くの会社に当てはまる「戦略」の考え方・実践の仕方になります。
つまり、まず、「何になるか」を決める事から始まるのです。
次に、「戦術」として、その「何」に向かう為に必要な「商品・技術・サービス」を決める事が重要であり、その展開の為に「戦闘」能力を高める教育訓練があり、また、内部情報や外部情報を共有化してビジネスの質的向上を図る事が重要になります。
つまり、「情報の共有化」を行い、さらに、「よいパートナー」を開拓してビジネスを質的に向上させる訳です。

 これを新しいビジネス・モデルとして、右掲のように、「好きな事=仕事」という感覚で反復して、さらに、持続的発展を繰り返す事がポイントになるのです。
「次から次ぐへ課題」が出てきて、それを克服する流れの中で、ある時、別の方向性が現れて「創発進化」という状態になるのです。
もとろん、一人の方から始まるのですが、その新ビジネス・モデルに共鳴する人が増えて、組織に、今までと違った新しいミッションが誕生する事が創発進化であり、戦略的変革という事になるのです。

つまり、日高さんの米軍の新兵器は、我々にとっては「商品・技術・サービス」なのですが、「商品」という点では莫大な資金力が必要になり、「技術」は自社にないのでパートナーに依存するので、それぞれが困難な課題なのです。
残るは「サービス」です。付加価値を「サービス」で生み出すので大変なのですが、例えば、アセンブリーやEDIによるJit方式の納入を現実に進めておられる訳です。
これらは、「働き方改革」で上流企業は外注化したい分野であり、この2つの「サービス」を核とした「戦術」と考えると「戦略」は「お客様の現場作業の代行」となり、その実現の為に「戦闘」の能力(生産性)向上を図る必要があるのです。

この2つの「サービス」を「好きな事=仕事」とする社内風土を作り上げる必要があります。
営業の方も風土化したサービスを自信をもってお客様にPRする事ができるようになるのです。
確かに、部品などをつくるので品質が重要視されますし、厳しい納期管理が要求されます。
さらには、トラブルが発生したら「製造物責任」も問われるものなのです。そういう厳しい側面があるので、「好きな事=仕事」の社内風土づくりが重要になるのです。
ぜひ、理念の他に「戦略」を再考して頂きたいと願っています。


2.最後に
 『日高義樹のワシントン・レポート』は‘95〜’11年の放送で、軍事的な要素の多い番組でした。
毎回、見た訳ではなかったのですが、記憶に残った言葉が「Strategic Transformation」だったのです。この言葉は、‘91年(平成3年)、私がトヨタ系販売店時代にIBMの管理職向けに「SIS」の展開を話した資料に出ていたので、恐らくはIBMの方からも教えて頂いていたのだと推測しています。
しかし、ピントボケだったので日高さんの解説で腑に落ち強く印象に残っているのです。


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