<月刊AMI>2012年6月号 Vol.131 ■△▽●○□


1.「変わる」という事のメカニズム


 右掲は「4つの人材」と言われるものです。
誰でも「この会社で頑張るぞ!」という思いで入社されていると思います。
しかし、時間が経過するにつれて「志」が変化していくのです。
どんな集団でも「80:20の法則」が働いて、上昇気流に乗る2割ほどの人と残り8割と別れるのですが、さらに、その8割のうち2割の方は逆の方向に向かってしまい「罪」という「人罪」になってしまうのです。

 こういう意味で「人事」という事は難しいのですが、最近、言われている「一樹百穫」という格言があります。
「一樹百穫」は、中国の古典である「管子」に出て来るもので、「富国強兵」の秘訣を、短期的スパンと長期的スパンに分けて教えるものであります。
「樹」は、動詞で植えるという意味で使われており、

 ★1回植えて、1年以内に、成果を出すには、穀物を植える
 ★10年という時間をかけるならば、木を植えると毎年実りが出るので穀物よりも収穫が大きい
 ★さらに、時間をかけて、より大きな収穫を求めるならば、人を育てよ

と教えているのです。
「百穫」は100年間の収穫とか100倍の収穫と置き換えることが出来ますが、「人」の能力の大きさを示して「人材育成」を説いているのです。


 もう一つ重要な事は、右掲の比叡山延暦寺の開祖である最澄が著した「山家学生式」にある「一隅を照らす、此れ即ち国宝なりと」という言葉です。
「径寸」とは金銀財宝のことで「一隅」とは今いる場所のことを指し、つまり、「一隅を照らす」が意味するところは、「お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代え難い貴い国の宝である。」
と教えています。

 このように、中国の古典で「人を育てよ」と教え、日本の古典では「一隅を照らす」人こそ「宝」と教えているのです。
4月末に起こった夜行バス事故の被害者の中で、職場の上司の方がインタビューに応えて「宝」を失ったと表現されていましたが、素晴らしい上司の言葉と思いました。

 今、我々は「人財」と呼ばれる働きをしているでしょうか。
また、そうと言わずとも「一隅を照らす」という「人材」と認められる存在であるだろうかと自問自答してみたいのです。
自分では、そうだと思っていても、他人の評価が違っているケースが多いのです。
このギャップを知る必要があります。
評価されない理由って、何だろうという事です。確かに、自分の仕事では立派な業績を残しているかも知れませんが、他人との関り方がまずいと他人へ悪影響を及ぼすという弊害もあるのです。
この他人との関り方が上手でなくてはならないのです。
まさに「鶏口牛後」という格言通りなのです。
小さな集団でもリーダーシップを発揮する人が「人材」であり「人財」となるのです。

 世間は厳しい風が吹き荒れているのです。
「人材」と評される人が多くなることが重要です。
まずは「一隅を照らす」であり、それを通して、周囲と上手に絡み合ってリーダーシップを発揮できるようになって頂きたいし、そうでない方は、少なくとも「人在」で留まって「人罪」にならないように言動に注意したいものです。
よろしくお願いします。
2。「さいごに」
 今月は「4つの人材」について書きました。
よく、「人材センター」という組織や会社がありますが、そこから派遣されてくる人は、限られた能力で「人材」なのです。
会社に入った方は、「一隅を照らす」からリーダーシップをとれる人に育って初めて「人材」なのだと思います。
「変えられるのは自分だけ」と言われますが、自分が変わることによって「他人」が影響を受けて変わってくる事が重要なのです。
まず、自分から変わって行きましょう。


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