<月刊AMI>2011年11月号 Vol.124 ■△▽●○□


1.「Stay hungry,stay foolish」


 右掲は、10月5日になくなったアップル社の前CEOだったスティーブ・ジョブズ氏の写真です。
彼のスピーチや発言が話題になっていて、有名なスタンフォード大学でのスピーチにあった「Stay hungry、stay foolish」はよく取り上げられています。
「貪欲であれ、バカになってやれ」とでも約したらよいのかも知れませんが、私は、「Stay hungry」を前向きな不満を持ち続けろと置き換えてみたいのです。
現状を肯定してしまえば進歩はないという事は皆さんもよく理解されていると思います。しかし、「不満」にも前向きか後向きかの相違があります。
前向きな「不満」は「ギャップ」を埋める努力をすれば、新しい展開が始まるのです。
この新しい展開のために「stay foolish」すなわち「愚直に実行せよ」と言ったと私は解釈しています。
そして、「Stay hungry」である為の姿勢として、彼は、2000年1月のフォーチュン誌に
「顧客はこれ――全ての詳細に注意を払う――のためにわれわれにお金を払う。
そうすれば、彼らが当社のコンピューターを使用するのが簡単で楽しくなるからだ。
われわれはこの点で非常に優れていることを期待されている。
顧客に耳を傾けないという意味ではないが、彼らには少しでも近いようなものさえ見たことがないうちに何が欲しいというのは非常に難しいからだ。
たとえばデスクトップでのビデオ編集を例にとると、自分のコンピューターで映画を編集したいというリクエストを誰からも1つも聞いたことがなかった。
しかし、今は人々はそれを見て、「これはすごい!」と言っている」
と言うインタビュー記事があるそうです。
丁度、CEOに復帰した時で、iMacが大きな支持を得て、さらに、iPodなどを発売しようとした時の事です。非常に含蓄のある言葉だと思います。
特に、「顧客に耳を傾けないという意味ではないが、彼らには少しでも近いようなものさえ見たことがないうちに何が欲しいというのは非常に難しいからだ」
という件はマーケティング関係者にとっては重要な事を言っているのです。
「客は見たこともない物を欲しがる訳がない」という風に読むと新しい物を提案する提案型営業の極意が見えて来るのです。
すなわち、「新しい物」を目に見える形で示す事が重要なのです。

営業でもコンサルティングでも同じなのです。
「Stay hungry」で、前向きな不満を抱いて現実とギャップを知って「新しい物」をイメージ(あるいは商品化)して、それを「stay foolish」にトコトン追い求める事が重要なのです。
この実践法として、SPIN法という営業術があります。
S・・Situation(状況質問)、P・・Problem(問題質問)、I・・Implication(示唆質問)、N・・Need-payoff(解決質問)という4つの流れになっている物です。
まず、「〇〇はどうですか」と具体的に状況を聞く質問を投げかけて、返ってきた事柄を受け止めて(受容)、問題を確認し、さらに課題化するのです。
その課題を解決する為に「こうではないですか」と商品を含めて解決策を示唆するのです。
最後に、その解決策へのニーズを確認した上で支払条件などを取り決めるという4つのステップを実践する方法なのです。

  このSPIN法でも「状況」を聞くという事から始まるのです。
「満足」していては前に進まないのです。
「このままでいいのですか?」という積極的な問いかけが重要なのです。
少しでも「不満」を感じていると「このままではダメだ」というポジティブな不満が生じるのです。
そこに、解決策として「新しい物」を提案するのです。
ジョブズ氏は、「彼らが当社のコンピューターを使用するのが簡単で楽しくなるからだ」という精神で製品開発を行ないヒット商品を産んで来たのです。
我々は、「この新しい商品を使えば、〇〇がさらによくなる」という〇〇を明確にして提案する事が重要なのです。
この点をシッカリと身につけて、stay foolishに実践して行きたいと思います。
2。「さいごに」

上記でもジョブズ氏の言葉をご紹介していますが、もう一つ気になっている言葉があります。
それは、彼の
『もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか』と。「違う」という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということです。』
という言葉です。流石に「禅」の修行をつまれたという事で厳しい生き方をしておられます。
凡人の私には、「毎日、最後の日」と覚悟して臨むことから始める必要がありますが、
惰性に流されずに「自分らしさ」を発揮する人生を歩みたいと思います。



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