<月刊AMI>2010年7月号 Vol.108 ■△▽●○□


1.ストレッチ・カスタマー

 先日、会長様から「栩野さんは、野村さんの事を記事に書いておられたので、TV番組を録画したので贈ります」とプレゼントして頂きました。
早速、パソコンで見ようと再生するとウンともスンとも言わないのです。
おかしいなぁと社員に見てもらうとブルーレイだったのです。
どうしようかと思っていたら息子のゲーム機で再生できると分かって2度見ました。
さすがに、BSハイビジョンの録画なので画質が非常に良かったです。これが、最初のエピソードです。

 会長様から「このビデオからヒントを得て、うちの社員に分り易く教えて欲しい」と依頼されていましたので、2度見ました。
私は、全体から「ストレッチ・カスタマー」という言葉を思い浮かびました。
ストレッチは「伸びる」という意味です。すなわち、自分を伸ばしてくださるお客様の事なのです。
このお客様は「要求が厳しい」のが特長です。対象的な言葉に「ロイヤル・カスタマー」があり、これは、儲けさせてくれる有難いお客様という意味です。
「ストレッチ」と「ロイヤル」との間には、微妙な相違があるのです。それが「要求が厳しい」という点なのです。

 ビデオでは、野村「ID野球」の始まりは、西鉄の稲尾投手を攻略する事とありました。
野村さんは、ストレートにはバツグンの才能を持っていたが、これでは2割5分の成績なのだそうです。
3割バッターになる為には、それなりの工夫が必要なのです。
稲尾投手の変化球に対応できなくなり、徐々に成績が下降し始めた時に「これではダメだ」と決断して、友人に16mmで稲尾投手のワインド・アップする際の手元に焦点を合わせて撮影してもらったそうです。
この16mmフィルムを何度も何度も見ているうちに、稲尾投手がシュートを投げる時には、ワインド・アップの際に手元にチラっと白球が見えるという事が分ったのです。

 「敵を知り己を知れば、百戦すれども危うからず」という言葉があるように、稲尾投手のクセが分ったので変化球に対応できるようになり、戦後初の三冠王にもなって強打の捕手として大成されたのです。
これが野村さんの「ID野球」のスタートだったのです。
稲尾投手という「大きな壁」が立ちはだかりスランプに陥ったのですが、このスランプが野村さんのID野球に繋がったのです。
このエピソードが、その後、「野村再生工場」と言われるように、低迷する選手や球団を蘇らせて日本一に導くようになったのです。

 このビデオから学ぶ事は多々あるのですが、全部をご紹介する事は難しいです。
そこで、このエピソードに絞って「ストレッチ・カスタマー」と「ロイヤル・カスタマー」化という2点を書きます。
「不進不存」という言葉がありますが、「壁」にぶつからずに「ぬるま湯」でいると企業も人も衰退するのです。
まず、「壁」にぶつかるという事ですが、展示会などで新規のお客様と数多く出会っているので「壁」の存在はあるのです。
問題は、新規のお客様の要求に粘り強く応え続けて、お客様の要求とのギャップを埋める提案で突破する事なのです。
このギャップを埋めるのに、メーカーとの交渉や場合によっては新しいメーカーを探し出す事が「ストレッチ」すなわち成長させてくれるのです。
もう一点の「ロイヤル・カスタマー」化は、これらの新規のお客様をフォローして、一点ずつ新商品を勝ち取ってシェアを伸ばすことで「儲け」させて頂ける企業にすることなのです。

 この両面が重要なのですが、最初の「ストレッチ」に挑まない限り「ロイヤル」化はないのです。
「ストレッチ」の基本は「考える」であり、「考える」とは、野村さんが稲尾投手を16mmで分析したように「相手を調べる」という事なのです。
「敵を知り・・」という格言がありますが、「己」で立ち止まらずに「考え」て「壁」をぶち破る工夫をこらす事が大切です。
皆さんも「壁」に跳ね返されないで、また、「できない理由」を言わないで「ギャップ」を埋める工夫をして「ストレッチ」して発展・成長して頂きたいと思います。私も頑張ります。


2。「さいごに」

政治も経済も国際環境も厳しい状況にあります。
本来なら選挙や内閣の入替えなどの時間はないのですが、混迷の中で迷走しています。
こんな時こそ「看脚下」で足元のことを大切にして行きたいと思います。
「着実・前向き・具体的」の3拍子で頑張って行きましょう。



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