<月刊AMI>2018年10月号 Vol.206 ■△▽●○□


1..「限界効用逓減の法則」

 右掲は、「限界効用逓減の法則」を表すグラフです。ビールの量を横軸に「うれしさ」(効用)を縦軸にしています。
最初の頃は、グラフが示すように「うれしさ」がほぼ垂直に上昇しますが、1を示す頃から角度が緩やかになり、2の頃からはほぼ水平になって行くことを示しています。
ビールは「最初の一口が一番うまい」と言われますが、まさにこのグラフが示しているのです。

 このグラフは「関係性」でも言えるのです。
「第一印象がよい」という事でも、長く付き合っていると「よい」という印象(効用)が少なくなってしまい、ほぼゼロ状態が続くのです。
夫婦の関係でも同じで、長年、一緒に暮らしているとお互いの「よさ」を感じなくなり、いわゆる「空気」の関係になって行くのです。
空気とは、なかったら困るという意味なので、無くても構わない状況という意味です。
そして、冷めた状態が続き、例えば、「熟年離婚」は亭主が定年退職をして自宅に居るようになり、妻が65才になり第3号被保険者(俗に主婦年金)の受給資格が出来ると妻に依存度が高い亭主の面倒を見るのが嫌になり、いわゆる「ぬれ落ち葉」状態が鬱陶しくて離婚に走る事に繋がって行くのです。

 この関係性は他の事でも同じ現象を引き起こします。
例えば、仕事ですが、新規の際は新しい発見があって面白い・楽しいのですが、長く続くと慣れから「マンネリ」化して単なる作業でしかなくなるのです。
作業とは何も考えずにする受け身な状態で行うので、右掲の「レンガ積みの法則」のような仕事効率になるのです。

1.0は、ただ単に受け身で仕事をこなしている状態ですが、1.6は「納得」の状態で一日の仕事スケジュールが見えている時の物です。
今日は、これだけとゴールが見えた時の仕事効率なのです。
1.62は、上記のスケジュールよりも「もっと早く」と考える時に生まれるアイデアが活かされる事を表しています。
「改善提案」と言いますが、現場で工夫する事の重要性を1.62≒3倍と言い換えているのです。
実際に、「工夫」して行うようになれば3倍に近づき、他の人にも波及すると組織全体が1.6倍に跳ね上がって行くのです。

 逆に、「改善」がないと「マンネリ」に陥ってしまうのです。
営業とお客様との関係も同じです。長年お付き合いしていると「あの人は○○」と固定観念が出来てしまうのです。
この固定観念が作用してトラブルが無ければリピートの注文が来るのです。
ところが、時代が変わって行くので、お客様の状況も変わり、さらに、ライバルも虎視眈々とスキを狙っているので、ある時、ライバルが新鮮に感じる事になる危険性があるのです。
リピート注文でアグラをかいていると気が付くとリピート注文が減ってしまい、条件の悪い物だけが来る事になるのです。
この危機に陥らない為に、営業は訪問して、新鮮な情報提供に心掛ける必要があるのです。
「雑談」という関係性を円滑にする手法も大切ですが、やはり「新鮮なネタ」で相手の心に響かせることが大切です。

 先の夫婦関係も同じです。「○○年目の宝石」とかCMが流れていましたが、言われてプレゼントするのではない「意外性」が相手の心を掴むのです。
何も男からという一方的な物ではないと思いますが、しかしながら、現実は現実です。
宝石とまではいかなくても「意外性」を発揮して相手を喜ばせる事は可能なので脱マンネリをはかりたいものです。
同じように、仕事の場合も同じで「意外性」で別な自分を発揮するようにしたい物です。
「意外性」・・相手が喜ぶことでないとダメなので難しいですが、少なくともスピード対応だけでも心掛けたいものです。


2.最後に
 前項でも不意な災難に出遭った時に「今日を生きる」という現実主義が大切だと書きましたが、シャープが「着眼大局、着手小局」をスローガンにしていたことを思い出します。
経営陣は「大局」は把握していたが、現実の「着手小局」が出来ずに大赤字になり、結果、台湾企業に経営権を奪われたのです。
しかも、3年も経たずに再上場するかという回復なので旧経営陣の無策にはあきれます。
「着手大局」を忘れないようにしたいです。


月刊AMIトップへ