<月刊AMI>2017年6月号 Vol.190 ■△▽●○□


1.「吾唯知足」と「充実」



右掲は新潟市にある知足美術館のシンボルマークです。
この美術館は新潟市にある(株)キタックという総合建設コンサルタント会社の本社移転時に併設された物とあります。
この美術館のHPを拝見すると「吾唯知足」(ワレ、タダ、タリルヲシル)という禅語があり、意味は「知足(ちそく)とは足るを知ること。自分の身分をわきまえて、むさぼりの心を起こさぬこと」とあります。
また、孟子の言葉に「足るを知れば、辱(はずかし)められず、止(とど)まるを知れば、殆(あやう)からず、以って、長久なるべし」と引用して美術館建設の背景を書いていますが、現実的には個人所有美術品の相続対策のように思われます。


 この美術館はどうであれ、「知足」という事は重要な意味があります。
特に、「足るを知れば、辱(はずかし)められず、止(とど)まるを知れば、殆(あやう)からず、以って、長久なるべし」という事は、解釈を間違えると大変な事になります。
「足るを知る」⇒「止まる」⇒「殆からず」⇒「長久」と上辺だけを読むと「満足して何もしない方がよい」と思いがちだと思います。
これは誤った解釈になると思います。例えば、具体的に「売上」という事を例に挙げると経営が厳しくなったからと言って新規開拓を望んでも効率の悪い結果になりがちであり、逆に、「知足」で今のお客様に「充実」という視点で提案をすれば、新規開拓よりも10倍効率が良いのです。
「止まる」とは新規に走るよりも既存のお客様を重視せよという意味があると考えると良いのです。
確かに、新規開拓よりも既存深堀の方が10倍の効率があるので「殆からず」という事になります。

 その「充実」の為に必要な事は何かを考える必要があります。
お客様との関係性を充実させる事は、右掲の「ザイアンスの法則」があり、「単純接触の法則」とも呼ばれるように、先ずは「接触」(コンタクト)を取る事から始まるのです。
しかし、幾ら既存客だと言っても提案する商品に違和感が働くと受入とは行かないのです。「会うほどに警戒心が解けて相手を理解し始める」とあるように提案する事が断られても一度で懲りずに何回も会う事で相手が理解し始めるのです。
確かに、断られるという心理的ダメージが大きいですが、営業は本来「ダメ元」なのです。
既存のお客様なので、全くムダという訳ではなく、警戒心が緩んだタイミング即ち、相手の名前と顔が一致して、アポが取り易くなった頃に「人間性」を演じる事が大切なのです。

 この「人間性」を演じるには、例えば、提案している商品の他社事例を苦労話を交えて紹介するのも一案です。
「苦労話」は誰でも興味を抱くので効果的なのです。
そして、同時に提案する商品が実績を増やして「充実」した状況になって行くと、それは「見えない」大きな武器になるのです。
このようにして、「見えない」武器、すなわち、自社が得意とする実績がパワーとなり流れを作って行くのです。
既存客へ深堀で商品の幅が広くなり、その実績で新規開拓の武器にもなるのです。
実際に、実績のある商品をご紹介する際に「自分の言葉」でご紹介できるのは格段の説得力があり、新規のお客様で警戒心が働いても、警戒心を緩めて興味を示してくれるのです。
さらに、昔から「売るもの3つ」と言われ「会社・商品・自分」を自分の言葉で語る事が大切だと言われますが、自社の実績を語る事が一番の方法と言えます。
「うちの会社では・・」とか「うちのお客様では・・」と切り出す事が多いほど強い営業と言えます。
「知足」には「充実」という言葉が隠れており、「充実」を通して「うちの・・」という切り出しが多くなり、世界が変わって行くのです。
まずは、原点に戻って「充実」という事をチェックして行きたいと思います。


2.最後に
 「知足」と「充実」について考察しましたが、「足りるを知る」という事で満足してしまうのではなく、その現実をベースにして、より充実させる方向で努力する事で質的向上を図ることに行きつきました。
故船井先生は「過去オール善」とおっしゃっていましたが、全ては実績の中に答えがあるという話と実感したのです。
誰しも「3つの‘不’」である「不足、不満、不親切」を切口に「無い物ねだり」をしがちなのですが、実は「逆転の発想」で充足していることを伸ばす事が大切なのです。
故船井先生は「長所伸長法」とおっしゃっていましたが、「できる事」が大切なのです。これを実感しました。


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