<月刊AMI>2015年9月号 Vol.170 ■△▽●○□


1.「積小為大」


 暑い夏も峠を越えて本格的な秋商戦に向かいます。
先日、大阪商工会議所の「これからの人口減少社会に対応したビジネストレンド」というセミナーを受けて来ました。
経済活動はGDPで表されますが、その内、民間消費支出が日本の場合約56%を占めると言われています。
因みに、米国は約68%と高い水準にあります。
米国は資源大国なので国内で賄える比率が高いので民間消費が大きなウエートを占めています。
このように、日本は資源が少ない国で貿易に頼るところが大きいので民間消費の比率が米国よりも低いのです。
不思議ですが、中国も日本と同じ傾向であります。

皆さまもよくご存じのように、「人口減少社会」という大問題が生じているのです。
右掲は日本の人口推移を推計した表です。
これから人口がドンドン減少する中で、高齢者の比重が高まります。
現在の年金支給65才を基準にすると、2015年では、15〜64才台が7682万人、65才以上が3396万人で現役世代が約2.26倍ですが、これが2060年には、現役世代が4418万人に対し年金世代は3464万人で約1.28倍となってしまという大変な事態です。

 物を買う層と言えば、やはり現役世代となりますので、経済の中心軸が少なくなり、逆に、健康問題が軸になる年金世代の比重が高まることになります。
現役世代の労働力不足は、ロボット化とグローバル化がキーになるので、生産の軸が変わってきます。
この傾向を受けて、日本の製造業の将来像が見えてきます。
すなわち、大量生産では日本の優位性を担保できないので、少量だが高付加価値の商品へシフトする必要があるのです。

 こういう流れは資源小国の定めなので、例えば、イギリス・フランス・イタリアなどのブランド型の製造業が一つの姿なのですが、果たして、日本のメーカーがオリジナリティあふれるブランド商品を開発できるのかという課題です。
高額商品も、まずは国内で売れることが第一要素なのですが、それを支える高額所得者層が増加して、さらに、その層が「舶来信仰」型から「国産信仰」へシフトするかが大きな課題なのです。
正しい例とは言えないですが、日本を代表する産業であるクルマで言えば、「レクサス」がベンツやBMW、アウディなどの外車信仰層にどのように評価されるかという事です。
「舶来信仰」の壁を壊すのは難しいのですが、旅行鞄メーカーなどでは、うまく国内でも評価されて、グローバル化へ向かっている例もあるのです。

 また、伝統産業では、「和」を切り口にしたブランドが海外へ進出し始めています。
清酒も国内の低迷から脱出ということで海外進出して成功事例が出始めていますが、「和」すなわち日本独自の文化なのです。
美術性のある例えば「扇子」などは可能性があると思いますが、梅干しを例にとりますと米飯がベストマッチングとなるとグローバルなブランド展開は厳しくなります。
このように、「和」を海外へと言っても難しい面があるのです。

 このような大きな流れを掴みながら、実際には「現実」での対応がベースになります。
このベース活動の中から、新しいお客様への対応を増やして「積小為大」(小を積み大と為す)という熟語を文字通り実践するしかないのです。
「小さなことからコツコツと」と言うのは西川きよしさんですが、大きな取引先も先ずは「小さな取引」からなのです。
その積み重ねで信頼関係が深まり、一つずつ取引が増えて、文字通り「大きな取引」もΣ(小さな取引)となるのです。
この点を踏まえて、毎日の中から明日への種まきをして頂きたいと思います。
全部の種が開花結実する訳ではないので、気の遠い努力が必要と思いますが、粘り強い営業力を発揮して頂きたいと思います。


2.最後に
 何かを変えようとする時に「大きな事」から取り掛かるとニッチもサッチも動かずに何も成果に至らずに終わることが多いです。
佐賀藩の兵法書「葉隠」には「些事優先」と説いており、大きな事は自分一人では決められないし、実践もできないが、しかし、「些事」(ささいな事)はすぐに手を出せるので優先すべきとしています。
私は、誰もが「即効果」を望みますが、その答えの一つが「些事」にターゲットをあて「積小為大」の考えで進めることにあると考えています。
決して、宝くじに当たるような夢想を追ってはいけないのです。


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